Microsoft Copilot 導入企業の動向とその可能性

Microsoft社が提供しているCopilotは、AIを搭載したチャット型のアプリでメール文の下書き作成やプレゼンテーション資料の作成、WEBページや文書の要約など様々なことをサポートしてくれる機能です。本記事では、Microsoft Copilotの機能別の導入事例と、今後有用であると思われるCopilot活用事例を紹介します。

Microsoft Copilotのサービス

Microsoft Copilotにはいくつかのプランがあり、プランによって料金や機能が異なります。

CopilotCopilot ProCopilot for Microsoft 365
対象個人個人ビジネス
料金無料3,300円/ユーザ・月4,497円/ユーザー・月(Microsoft365 Business Standard
またはBusiness Premiumのサブスクリプションが必要)
チャット機能
商用データの保護Extra IDユーザーは可能
Microsoft 365での利用
Microsoft Teamsでの利用
Microsoft Graphグラウンディング
Microsoft copilot studioを通したカスタマイズ

※2024年4月18日時点の情報です https://www.microsoft.com/ja-jp/microsoft-copilot

企業での導入事例

ここでは、Copilotの機能別に実際にどのように企業で導入されているのかを紹介します。

チャット機能

Copilotでは基本機能として作成したい文章の目的やなぜ必要なのかの理由や関係といったコンテキスト、どのような文章を期待するのかといった期待値、作成するためのソースなどをプロンプトに盛り込んで指示することで用途に合わせた文書を作成することができます。A4片面1枚程度のチラシ文章であれば、作成に1分、微調整5分程度で完了するそうです。1

Copilot for Microsoft 365

Copilot for Microsoft 365はチャット機能に加えて、上記のプラン表で紹介したように、WordやExcel、TeamsなどでCopilotを活用することができます。Wordの文書をもとにExcelを作成するなどのMicrosoft製品間での横断的な作業に対応しているできることも特徴です。NECや日立製作所、トヨタ自動車、ソフトバンクといった大企業を中心にすでに数十社以上がサービスを導入しています。(2023年12月時点)では、具体的にどのように利用されているのでしょうか。

① Teamsでの議事録作成
自動文字起こし機能を使って、Teams会議の議事録を作成することができます。これによって、会議の内容を要約して振り返ったり、出席できなかった会議の内容を把握したりすることができます。日本ビジネスシステムズ社は、Teams にデフォルトで搭載された AI に加えて追加プロンプトを作り、会議の要約を PowerPoint や Word でも使用可能にし、出席者名や日時と場所、目的を追加し精度も向上させたことで、迅速に分かりやすい議事録を作成することができるようになったと報告しています。2

②自社の情報を検索する
Copilot for Microsoft 365を導入すると、社内のSharePoint Onlineのサイトを横断でチャット検索できるようになります。様々なファイルに分かれて保存されている煩雑で膨大な情報をチャットで質問することによって手に入れることができます。実際に富士通が行った検証では、「最近、社内で募集されているイベントを教えて」や「xxxみたいなタイトルの資料をどこかで見た記憶があるんだけど探して」など、抽象的な質問でも十分威力を発揮していたそうです。3

Microsoft copilot studio

Microsoft copilot studioにはAWSやOracle、AdobeやSalesforce、Slackといった1100を超える組み込み済みプラグインとコネクタが標準搭載されていて、カスタム Copilot をノーコード、ローコードで作ることができます。社内のイントラサイトからも Copilot を作成でき、勤怠や給与などの URL を Microsoft Copilot Studio に追加すると、社内の認証のかかっているサイトからも情報を拾うことができます。ホームページ以外のナレッジの追加も可能で、社内規約の PDF や Word、PowerPoint といったドキュメントを直接アップロードすることも可能です。Copilot for Microsoft 365ではMicrosoft copilot studioを通したカスタマイズが可能となっています。
実際にベネッセホールディングスでは、Microsoft copilot studioを活用して様々な部門のマニュアルを中心に、 750 ページほどのデータをソースとして、社内相談AIを開発しています。Microsoft copilot studioを導入することで、新規データセットの再投入やログ分析をクイックに反映することが可能になり、また、参照元URLをつけることができ、どこから回答を生成したかをクリック一つで確かめることができます。開発したAIの利用状況はもちろん回答精度の良し悪しも具体的にわかるため、改善しやすいという特徴があります。4

導入事例から見られる効果

Microsoft Copilotを導入することで、情報の整理や資料の作成などの業務の生産性を向上させることができるとわかりました。実際に導入している日本ビジネスシステムズ社の社内調査では従業員の1か月あたりのメール業務が2時間、チャットに要する作業が3時間、会議も3時間、それぞれ短縮されました。これらの業務が削減されたことで、従業員の価値創出時間が14時間捻出できたという効果が計測されています。

出典:Microsoft 「Japan News Center」〜GenAI Customer Day: 生成 AI を “使う”か“創る” か ~ 日本における生成 AI サービス導入企業の最新動向〜

導入事例から見られる導入への注意点

生産性向上の一方で、いくつかの課題も見つかっています。

一つ目は、利用には工夫が必要であるということです。富士通の実証では、PowerPointでの利用で苦戦するユーザーが多かったようです。具体的には、単に「xxxについての資料を作成して」だけだとクオリティの低い資料が作成されてしまったという具合です。この課題に対してプロンプトの情報量を増やすことで、ドラフトとしての精度を上げる工夫を施したユーザーも多かったそうです。5

二つ目は、自社のデータとの整合性やデータ不足です。Microsoft copilot studioは自社に合わせたCpolotを開発できますが、その際に使用する自社データとの整合性が課題となります。ベネッセホールディングスの開発事例では、回答精度が導入前のオリジナル開発版の81%から、86%とやや向上した一方で、「データの解釈違い」や「該当データがない」というパターンが54%あったそうです。データの不足は、FAQや社内データの追加でカバーできることがわかり、データの解釈違いは具体的には文言の揺れであったため、専門部署での言い回しと一般社員の言葉の差異を補足することで改善することができたそうです。さらに、社内のデータへのリンクも資料の使用目的や使い方を簡単な文章で補足することで改善されました。6このように、導入には注意すべき点もありますが、利用する側の工夫次第で効果的な活用をすることができます。

Microsoft Copilot の強み

チャット形式で利用できる生成AIには様々なものがありますが、他の生成AIと比べたMicrosoft Copilotの強みとしては以下のものが挙げられます。

①インターネットにアクセスでき、引用元のリンクをクリック一つで確認することができる
Cはブラウジング機能に対応しているため、常に最新の情報にアクセスすることができます。また、引用元のリンクや参考になるwebページのリンクが表示されるため、クリック一つで情報を確認することができます。

②Microsoftのアプリケーションとの互換性が高い
他の生成AIでもプラグイン等を利用すれば、ExcelやWordなどのMicrosoft 365アプリケーションでAIを利用することが可能ですが、Copilot for Microsoft 365を利用すれば、自社のクラウドに保存されているMicrosoft 365のアプリケーションの情報からチャットで質問に答えたくれたり、資料を作成したりしてくれます。各アプリケーションでCopilotが利用可能な上、アプリケーションを横断した作業も可能です。

③セキュリティレベルが高い
Copilot for Microsoft 365では、自社のクラウドに保存されているデータを自動で学習して応答してくれるので、機密情報や社外秘の情報を社外システムのAIに入力して学習してもらう必要がありません。また、有料であるCopilot for Microsoft 365やCopilotProユーザーに加えて、無料版でも組織アカウントなどのExtra IDユーザーであれば、商用データ保護が利用できます。この機能では、入力されたデータはAIの機能改善に再利用されないため、情報がAIに学習されたことで社外に出ることを防ぐことができます。マイクロソフト社であってもその情報にはアクセスできないため、セキュリティを担保した上で活用することができます。

Microsoft Copilot活用術

ここでは、Microsoft Copilotの強みを活かした活用術を紹介します。

<最新の情報をまとめる>

今回は、「最新のWTOの情報について10分程度の発表ができるようにまとめる」と指示をしました。モードは「より創造的に」、「バランスよく」、「より厳密に」の3つのうち「より創造的に」を選択しました。結果は以下の通りです。

WTOが2024年4月に公開した「Global Trade Outlook and Statistics」の内容を元に要点をまとめて回答してくれました。モードを変えると選ぶ情報やまとめ方も変わったので自分にあったモードを選んで使うことができます。

今度は「より厳密に」を選択して「大谷翔平選手の最新情報についてまとめる」と指示を出してみました。結果は以下の通りです。

4月25日13:00に行なったのですが。日本時間同日早朝に行われた試合の情報が反映されていました。

こちらは基本機能であるため、無料版のCopilotを使用していてもこのように最新情報をまとめて回答してくれます。文章などを要約したり、文章などから資料を作成したりするAIは他にもありますが、最新情報を使ってまとめてくれる上に引用元まで示す機能が無料の基本機能となっているところがMicrosoft Copilotの特徴と言えるでしょう。

  1. 浅間商事株式会社ホームページ(最終閲覧2024/4/25)
     https://www.asama-shoji.co.jp/blog/ceo/14118/ ↩︎
  2. Microsoft 「Japan News Center」〜GenAI Customer Day: 生成 AI を “使う”か“創る” か ~ 日本における生成 AI サービス導入企業の最新動向〜(最終閲覧2024/4/25)
    https://news.microsoft.com/ja-jp/2024/03/25/240325-genai-customer-day-use-or-create-generative-ai/
    ↩︎
  3.  富士通広報note(最終閲覧2024/4/25)https://note.com/fujitsu_pr/n/nd96c22dcd15f
    ↩︎
  4. Microsoft 「Japan News Center」〜GenAI Customer Day: 生成 AI を “使う”か“創る” か ~ 日本における生成 AI サービス導入企業の最新動向〜(最終閲覧2024/4/25)
    https://news.microsoft.com/ja-jp/2024/03/25/240325-genai-customer-day-use-or-create-generative-ai/ ↩︎
  5. 富士通広報note(最終閲覧2024/4/25)https://note.com/fujitsu_pr/n/nd96c22dcd15f
    ↩︎
  6. Microsoft 「Japan News Center」〜GenAI Customer Day: 生成 AI を “使う”か“創る” か ~ 日本における生成 AI サービス導入企業の最新動向〜(最終閲覧2024/4/25)
    https://news.microsoft.com/ja-jp/2024/03/25/240325-genai-customer-day-use-or-create-generative-ai/  ↩︎